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魚沼のオヤカタ論。 -株式会社新潟プレシジョン編-
人は何を基準に「仕事」を探すのでしょうか。
私は2度目の転職を考えている時、転職サイトにびっしりと書かれたある社長の想いに興味を持ちました。
大きな会社ではなかったけど、その想いはしっかりと私の中に届き、この社長の下で働いてみたいと思い転職した経験があります。
『魚沼のオヤカタ論。』では、市内事業者のTop=オヤカタの、仕事への姿勢や熱い想い、きれいごとだけではない現場の話などを伝えていきます。
奥深き「プレシジョン」の世界。
匠の世界で成長できることをお約束します。
株式会社新潟プレシジョン 代表取締役 社長 星 輝彦 氏
「株式会社新潟プレシジョン」を知ったのは、ある座談会でした。
どのような会社なのだろう?自社PRのブースにはLEDランプに照らされツヤツヤな布の上に鎮座するステンレス製の「ミニ日本刀」と「ミニ屏風」が・・・。ディスプレイ用品の会社?と思ったら、なんと金属加工会社でした。
今回は、株式会社新潟プレシジョンの星輝彦社長にお話を伺います。
まずは会社の成り立ちについて教えてください
当社は現会長が1996年に十日町市で金属加工会社を立ち上げたのが始まりです。会社を立ち上げたものの、すぐに軌道に乗せることは難しかったため、福岡に本社を置く大塚精工株式会社の大塚氏に社長に就任していただきました。
7〜8年経った時、改めて独立し、現在に至ります。
私はといえば、今でこそ3代目社長ですが、親が何をしているかもよくわかっておらず、自分の道を進むべく理容師になるため専門学校に通い、新潟市で4年間理容師として働きました。いわゆるドラ息子というやつです(笑)
その当時、理容業界も変革を迎えていました。テレビドラマで人気俳優が美容師役として出演して美容師、美容室が人気になったり、1,000円カットのお店が台頭してきた時期でもありました。
この状況では、自分の店を持つことは難しいだろうと考え、一旦実家に戻ろうと仕事を辞めて帰ってきたら、金属加工の会社が魚沼に建っていてびっくりしました(笑)
もともとものづくりは好きでしたし、髪を切るのも金属を切るのも、ものづくりという点では一緒かなと思い、会社でアルバイトとして働き始めました。
会長は当初から家族経営をするつもりがなく、後継者も別に決まっていましたが、その方が事情により辞退し、私を新たな後継者に指名してくださり現在に至っています。
主な事業内容を教えてください
当社の主な事業は
(1)精密部品製作
(2)生産自動機一貫製作
(3)セラミックス加工
の3つがあり、十日町市2か所と魚沼市2か所の4つの拠点で生産しています。
(2)の生産自動機の一貫製作については説明が難しいのですが、長さ7mくらいの生産自動機は、製作部品1200パーツすべて設計から製作し、購入部品を合わせると部品の数は約3000パーツにもなります。
それらを配線や組付け調整しながら、制御システムで生産自動機の動きをコントロールし、約4~5か月を掛けて完成させます。
車載用コネクター組立機や端子圧入機など製作された様々な生産自動機は、主に海外で使用されています。
ある生産自動機の全景
多種多様な金属・セラミックス部品
当社では各企業の要望に合わせたオーダーメイドの生産自動機を作っているので、同じ部品を製作するということがほとんどありません。部品を組み立てて納品をしてしまえば、手元に残るのは製作に失敗した部品くらいなので、ある時私の子どもから「お父さんの作ったものはどこにあるの?」と聞かれたことがありました。
私達が手がけた製品は多分野で活躍しているにも関わらず、人の目に触れることがほとんどないため、展示会に金属部品だけを並べても、なかなか興味を引けません。それなら面白いものを並べてみようと思い、培ってきた精密加工の技術を活かして日本の名刀を6分の1サイズでステンレス板から切り出した『精密日本刀』を作製しました。
展示を始めると注文も入るようになったので、これからはBtoB(事業者向け)だけではなく、民生品BtoC(一般消費者向け)にも力を入れていきたいと考えています。
「戦国武将シリーズ」(刀身のみ)と精密日本刀を
一層引き立たせる金属製の「精密屏風」
歴史に残る名刀・戦国武将の愛刀の資料をデータ化し、
約6分の1スケールで精巧且つ忠実に再現した「精密日本刀」
額縁を含むすべてを1枚のアルミプレートから削り出した
超精密切削加工「金属アートパネル」
会社名の「プレシジョン」とはどのような意味があるのでしょうか
「プレシジョン」には精密という意味があります。
新潟で一番の精密機械を作る会社になるぞ!という想いから、会長が命名しました。
金属加工を行う会社は多くありますが、当社は「精密技術」が売りです。
他の金属加工会社から断られた精密部品を作ることもあります。
−失礼を承知で伺いますが、金属加工がAI(人工知能)に取って代わられることはありませんか
精密部品の加工は、加工する機械のセッティングが命です。
金属は温度によって伸び縮みもしますし、そのような状態を検討しながら行う作業を、AIが取って代わることはありません。
部品一つからでも喜んで作りますし、多品種少量生産というニッチなところも強みです。
仕事の魅力は何でしょうか
工場と言っても同じものを大量生産するのではなく、多品種を少量生産しているので、日々さまざまな金属加工ができて飽きることがありません。
上司からああしろ、こうしろと言う指示はほとんどなく、自分の裁量で仕事をコントロールできるのも魅力のひとつです。
「精密機械」と一口で言っても、そこには切削、研削、自動生産機の組み立て、プログラムなどさまざまな分野が合わさって一つの精密機械になります。
得意な分野は人それぞれだと思うので、自分に合った分野で力を伸ばしていけます。
慣れてきたら、一人で2~3台を稼働させます
仕事をする上で大変なことは何でしょうか
日々さまざまな金属加工の依頼が来ますが、同じ形を加工することはほぼありません。
自分で考えて加工していくのは大変な作業です。
どのような方に向いている仕事だと思いますか
常に初めてに近い金属加工をするので、追求心のある方、自己管理のできる方、製作は個人作業であっても、それを組み立て製品にするためにはチームワークが必要な職場でもあるので、わからないことは遠慮せずに聞くことができるコミュニケーション能力がある方でしょうか。
必要な資格はありますか
特別な資格は必要ありません。
私も理容師の資格しか持っていません(笑)
自動生産機械の組み立てには電気技能士の資格など、部署によっては必要な資格もありますが、資格取得には補助があり、取得しやすい環境を用意しています。
会社のPRをお願いします
当社の理念は「匠の世界で成長すること」です。 精密技術に誇りを持ち、品質の高さを支持いただいています。
精密機械の生産という難しい仕事をしているので、労働の環境整備には力を入れています。
働く場の室内温度は、金属の伸び縮みにも関わるため年間を通して一定で過ごしやすく、福利厚生では、年間休日を109日と、誕生日月に1日取得できる特別休暇を含めて110日に増やし、有給休暇も取得しやすいように配慮しています。
工作機械はどんどん最新鋭のものを導入して、加工の精度、速度をあげています。
多種多様な工作機械に携われるので、匠の世界で成長したい方、加工技術を習得したい方はぜひお越しいただければと思います。
ーありがとうございました
魚沼工場の玄関には「土足禁止」の文字があります。工場なのに珍しいな、精密部品を作る会社だからかな?と思いましたが、そこには社長の「工場である前に会社であり、企業である」という想いが込められていました。
工場見学の途中、社長の前で社員の方へ「この会社どうですか」と聞く無茶振りをしましたが、「私は同業種3社目ですが、一番企業らしいです。有給休暇も取得しやすいです」と話していただきました。社長の想いは、社員の方へちゃんと伝わっているのだなと、何だか嬉しくなりました。
子ども達が工場内を見学できる魚沼オープンファクトリーへの参加や、新潟「越品」への出展など、新たな分野にも挑戦する開かれた工場に、社長の意気込みを感じます。
ものづくりに興味のある方は、ぜひ一度同社の門を叩いてみてはいかがでしょうか。
会社情報
株式会社新潟プレシジョン 魚沼工場
〒946-0075
新潟県魚沼市吉田1215
Tel:025-793-1201
Fax:025-793-1203
HP:株式会社新潟プレシジョン<外部リンク>
■事業内容
精密部品製作、超硬部品製作、セラミックス部品製作、精密治工具製作、自動機製作