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椛沢文庫に込めた想い ─ 魚沼市の子どもたちへ贈る「知のたからもの」

ページID:0032310 更新日:2025年8月8日更新 印刷ページ表示

どのような本を読んでも、知らなかったことは自分の知識となる。

 数年前、図書館で「こちらの本は、椛沢英二さんから寄贈いただきました」という紹介文とともに、真新しい絵本や児童書が陳列されているのを発見しました。
 紙離れが進んでいると言われる時代に、子ども達がたくさんの良書に触れられる機会をくださった椛沢英二さんとはどのような方なのだろうと、お会いするのを楽しみにインタビューへ伺いました。

椛沢英二氏2
「椛沢文庫」寄贈者 椛沢英二氏(株式会社クレス出版 元代表取締役)

 

生まれ育った魚沼への想いを教えてください

 私は昭和22(1947)年生まれで、旧入広瀬村の出身です。五人兄弟で育った実家は裕福とは言えず、家畜の世話など家の手伝いに明け暮れていました。
 豚、ヤギ、綿羊、ニワトリ、ウサギと多くの動物を飼っており、残飯を煮て作った餌の臭いはいまでも忘れられません。
 正直、子どもの頃の思い出は楽しいことばかりではありませんでしたが、その体験が頑張り続ける原動力になったと思います。

 中学生の頃に母が亡くなった時には、周囲の方々に随分と助けていただきました。
 たとえば「めっこ飯(芯の残ったご飯)」の戻し方など、生活の知恵をも教えてもらい、本当にありがたかったです。
 私はこれまで、国内外のさまざまな土地を訪れてきましたが、魚沼の人の温かさは一番だと思います。

 50代に差しかかった頃、魚沼の友人から町村合併で「入広瀬」の地名が失われるかもしれないと聞き、「入広瀬」を心に刻みたい、そんな思いから、東京の自宅から入広瀬まで徒歩で踏破しました。
 無事入広瀬にたどり着いたときの感動は今でも忘れられません。

 魚沼の名を聞くだけで元気が出ます。
 ふるさとは、私にとって心の支えであり、励みであります。

 

学術書専門の出版社を立ち上げた経緯を教えてください

 高校卒業後、東京の食品会社に就職しました。
 食品を配送する部署に在籍し、半年後には責任ある仕事も任せてもらいました。
 しかし、いずれは料理の道で身を立てたいという想いがあり、数年で食品会社を辞めたあと、食品会社で共に働いた方のつながりから精養軒や明治座などさまざまな店で修業を重ねていました。
 ある時、出版の知識はありませんでしたが、印刷ブローカーの友人と、自分が好きな仏教関連絶版書の復刻に可能性を感じ、独立資金を得るために学術書専門の出版社「株式会社日本図書センター」を立ち上げ挑戦を決めました。

 多くの資料を集め、まとめて出版するのですが、データ量が多くなれば価格も高額で最初から売れたわけではなく、全国に支店を持つ販売会社の社長には十数回営業を断られながらも通い続け、ついに販売の承諾を得ることができました。
 大きな手応えを感じましたし、そこから軌道に乗せることができました。

 それから十年後に、基本的学術図書を刊行する「株式会社クレス出版」を設立しました。
 まさに波乱万丈の時代でした。

 

ー「料理の道で身を立てたい」という想いは結実したのでしょうか

 平成元年春に出版社を立ち上げて、同年秋に西葛西駅近くで居酒屋を開店し、二足のわらじを履きました。
 睡眠時間は4時間という日々が続き、妻からも心配されるほどでしたが、魚沼への恩返しの想いで、新潟のへぎそば・地酒の店として魚沼産コシヒカリ、郷土料理を提供し、特に魚沼の山菜は大変喜ばれました。

 おかげでお店も繁盛し、自分を支えてくれていました。

 

魚沼市へ児童書を寄贈された想いを教えてください​

 18歳で上京し、家庭を築き、会社を興しながらコツコツと貯めたお金で、1回目はお世話になった恩返しの気持ちを込めて入広瀬の子どもたちのために本を寄贈しました。
 本は長く残りますし、子どもたちだけではなく大勢の方に読んでもらえると思いました。

 2回目は、3年ほど前、市内の宿泊施設の近くを歩いていたとき、下校中の子どもたちが元気にあいさつをしてくれたことがきっかけでした。
その感動が忘れられず、感謝の気持ちを込めて927冊の本を寄贈しました。

 以前、寄贈した本を手に取った際、「椛沢文庫」の判が押してあることに気づき、誰かの役に立てたことを実感できて嬉しかったです。

入広瀬小学校に寄贈された椛沢英二さん文庫 入広瀬小学校は令和4年度末をもって閉校しましたが 椛沢さんの想いは子どもたちに届いていると思います
入広瀬小学校に寄贈された「椛沢英二さん文庫」
入広瀬小学校は令和4年度末をもって閉校しましたが、椛沢さんの想いは子どもたちに届いていると思います。

 

2025年4月に開館した生涯学習センター「ここいら」には約90,000冊の蔵書があり、その中に椛沢さんの想いが込められた「椛沢文庫」が収められています。
2025年4月に開館した生涯学習センター「ここいら」には、約90,000冊の蔵書があり、その中に椛沢さんの想いが込められた「椛沢文庫」が収められています。

 

魚沼市の子どもたちへメッセージをお願いします

 どんなときも、相手の立場になって考える気持ちを大切にしてください。
 特に、あいさつは人との関係を築く基本中の基本です。
 明るい笑顔で、元気な声であいさつをされて、心を開かない人はいません。

 そして、本を読むこと。
 知らなかったことが知識となり、生き方や考え方を教えてくれ、必ず自分の力になります。
 分野は問いません。
 多くの本に触れて読んで、ぜひ魚沼から世界へ羽ばたいてください。

 

ーありがとうございました。

 お話を伺った椛沢さんは、「継続は力なり」という言葉を体現されている方でした。
 人は誰しも努力を重ねていますが、それを継続できる人はそう多くはありません。
 椛沢さんが語った「本を読むこと」「あいさつを大切にすること」「ふるさとへの想い」は、「椛沢文庫」として、魚沼の子どもたちの心へしっかりと届いていると感じました。

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