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てくてく魚沼暮らし~栃尾又温泉で日帰り湯治を試してみた
戦国武将も愛した歴史ある温泉地を有する魚沼市には、泉質の異なる14カ所の温泉地があり(参考:新潟県公式ホームページ<外部リンク>)その日の気分や肌の状態に合わせた温泉につかることができます。
今回はその一つに行き、実際湯につかった感想を交えレポートします。
約400年の歴史を誇る栃尾又温泉のいで湯は、全国的にも珍しい「ラジウム泉(放射能泉)」
放射能泉は「万病の湯」「子宝の湯」と呼ばれ、昔から湯治の名所として親しまれています。
湯治といえば「数か月自炊しながら滞在する」というイメージがあり、忙しい現代人にはとても無理。しかし、「魚沼に暮らすと日帰り湯治に挑戦できる」ことを多くの方へ伝えたいと取材先に提案したところ、快諾していただきました。
果たして、ゆっくり、のんびりと過ごす湯治が数時間の日帰り入浴で体験できるのか!?「日帰り湯治」を試してみました。
栃尾又温泉を訪ねる。
国道352号を枝折峠へ向かって進むと湯之谷温泉郷があり、そのさらに奥へ進んだ先に栃尾又温泉はあります。
終点の栃尾又バス停は趣がある雰囲気
栃尾又温泉には三軒の湯宿が共同管理する大浴場があります。
立ち寄り湯は「お湯を試す」ことを目的として、宿泊湯治をされるお客様が少ない時間帯(11時00分~13時00分)のみ解放されています。都合によって利用できない日もあるため、7日前~前日までに自在館ホームページ上で予約が必要です。

立ち寄り湯の窓口である自在館の受付で利用料を支払い、いざ温泉へ!
霊泉うえの湯と霊泉おくの湯入口
中に入るとどちらの湯が男性・女性なのか一目瞭然(※隔日男女交代制)
霊泉うえの湯入口
入浴前に栃尾又の霊泉について知ることができます
今回入浴したのは「霊泉 うえの湯」

湯につかってみると体温とほぼ同じ35℃台の温泉は、熱さも冷たさも感じない、不思議な感覚です。
最初こそ頭の中に「明日の仕事の準備は…」「夕飯の買い物も…」さまざまなことを考えていましたが、時と共に考えごとがすっと消え、ただ温泉と身体が溶けあうような、何とも不思議で心地よい感覚に包まれました。
時間にして30分。「心身とも何もせずに休む」という言葉どおりの満ち足りた時間は、まさに“湯治の原点”のような体験でした。
自在館の若旦那 星宗兵さんにお話を伺いました。

栃尾又温泉の特徴を教えてください
ラジウム泉は全国的にも珍しく、しかも湧き出す温度が体温とほぼ同じ35℃台というのはとても希少です。
温泉は“温度”と“鮮度”が命です。栃尾又温泉は源泉からの距離が短いため、湧き出した温度と鮮度のままかけ流すことができます。
放射能泉と聞くと身構える方もいますが、250時間入浴して胸部レントゲン1枚分の被ばく量です。安心して楽しんでいただけます。

ラジウム泉は「万病の湯」「子宝の湯」と呼ばれていますね
ラジウム泉の適応症もありますが、私としてはぬるい湯に長時間つかることによって副交感神経が優位になることこそ最大の効果だと思っています。
現代人は仕事や私生活のストレス、時間があればスマホに触れるなど、交感神経が優位に働くことが多く、普段からゆっくりできることがほとんどありません。
ぬるい湯にゆっくりとつかることで副交感神経にスイッチが入り、乱れている「身体が休む機能」を正し、元に戻すことによって体の自然治癒力や免疫力が高まることが「万病の湯」や「子宝の湯」につながっているのだと思います。

【栃尾又薬師堂】
自在館裏手にある薬師様。宿の安全や従業員の健康祈願から始まり、
やがて湯治客が願掛けをするようになったことから建立された。
現在はご自身や大切な方の健康祈願、子宝・安産祈願や、お礼参りに
たくさんの人が訪れ、千羽鶴やお礼参りの絵馬などが奉納されている。

【栃尾又の夫婦欅(めおとけやき)】
くぐると「夫婦円満になる」と言い伝えられている。

【子持杉】
根が続く二本杉。子持杉をまたぐと「子宝に恵まれる」と言い伝えられている。
湯治とは何でしょうか?
昔は、農閑期などに数か月滞在するのが湯治の主流でしたが、今はそんなに休める人はあまりいません。
だからこそ、休む時は休むスイッチを入れられるように自在館では2日~1週間程度の短期間、心と体を休めることだけに特化した「自在館式現代湯治」を提案しています。
栄養バランスのとれた1汁4菜を基本とする食事や清潔なお部屋を用意し、男女問わず一人でも気軽に訪れることができる場を提供しています。
湯治に必須だった自炊や部屋の支度など、手間のかかることは私共にお任せいただき、お客様にはただひたすら「ほんとに休むごろごろ湯治」に身をゆだねていただきたいと思います。『温泉につかる・ご飯を食べる・寝る』―それだけできれば十分です。
栄養バランスのとれた一汁四菜の湯治食
『温泉につかる・ご飯を食べる・寝る』だけ。簡単なようで難しそうです
常連のお客様の中には、「当初は何もしないことに罪悪感を抱いていたけど、今はちゃんと「休める」自分を誇らしく思える。」と朗らかに語る方もいらっしゃいます。
月2回定期開催しているプチ座禅体験は、「何もしない」時間をつくる意図もあります。情報過多でストレスフルな時代において「何もしない」ことは、かなりの難題といえますが、「何もしない勇気」こそ現代人には必要なのかもしれません。
プチ座禅体験の様子
館内にフィットネスルームがあるそうですね
フィットネスルームがあるシティホテルは多いですが、フィットネスルームがある山の中の温泉旅館は少ないと思います(笑)
県外から来訪されるお客様の中には、普段からジムに通うなど健康を意識されている方が多くいらっしゃいます。しかし長期滞在中、特に冬は雪に囲まれるため体を動かす場所がない状況でした。そこでフィットネスルームを館内につくってしまおうと考えたのです。
私は、400年続く温泉の湯守として、「温泉」で「湯治」をして「健康」になっていただくことはもちろん、「栃尾又温泉に来訪されるすべての方に、人生すこやかに生きてほしい」という願いを込めています。フィットネスルームでの運動や、プチ座禅体験などが、人生をすこやかに生きるためのヒントになればと思っています。

スミスマシンとアジャスタブルベンチ
―ありがとうございました
栃尾又温泉で「何もしない」日帰り湯治を試してからというもの、身体も心も軽くなり、さまざまなことに対して意欲的になりました。
現代に生きる私たちに本当に必要なのは、心と身体をゆるめる時間なのかもしれません。
これからも定期的にお試し日帰り湯治をしながら、いつかは長期滞在で「ほんとに休むごろごろ湯治」をする!と心に決めています。
仕事などに忙殺されている皆さん、魚沼市では日帰り湯治に挑戦できることを覚えておいてくださいね!
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栃尾又温泉自在館
住所:〒946-0087 新潟県魚沼市栃尾又温泉
電話:025-795-2211
〇立ち寄り湯(日帰り)※要事前予約
泉質:単純放射能泉(低張性アルカリ性温泉)
営業日:公式ホームページ<外部リンク>をご確認ください
営業時間:11時00分~13時00分(受付12時00分まで)
利用料金:1名様1,100円(消費税込・入湯税別の金額)
入湯税:100円
キャンセル料:当日又はご連絡無し:100%
- 大浴場のみ(うえの湯・したの湯・おくの湯)ご利用可能です。立ち寄り湯の場合は、休憩所、昼食提供を行っておりません。
- 清掃の関係で入浴できない浴槽もございます。ご了承ください。
- その他詳しくは公式ホームページをご確認ください。


