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てくてく魚沼暮らし~魚沼職人大學の学長に会いに行ってみた

ページID:0007575 更新日:2023年2月17日更新 印刷ページ表示

みなさんは「商店街」と聞くと、どんな場所を思い浮かべますか?
私は以前、都内有数の商店街の近くで働いていたので、商店街を覗きに行くのが大好きです。
新鮮な野菜や果物を販売する八百屋さん、良い香りを漂わせるパン屋さん、活きのいい魚介類を扱う魚屋さん…。
商店街はさながら、屋根のないスーパーマーケットだなと思ったことはありましたが、まさかそれを大学のキャンパスに見立てるとは!『魚沼職人大學』とは一体どんな所なのか、さっそく訪ねることにしました。

 

「魚沼職人大學」学長を訪ねる。

「魚沼職人大學」学長の写真
魚沼職人大學 初代学長 杵渕豊氏

 

お話をうかがったのは「魚沼職人大學」初代学長にして、操業90余年の生花店を営む杵渕豊さん。指定された小出商工会館の会議室で、まず目の前に「スッ」と出されたのは『魚沼職人大學入学案内』。
大學について伺いたいことの大半がまとまった、素晴らしい資料です。さすが学長。仕事が早い。資料を基に、サクサクと話をすすめる杵渕さんは、さながら教授のよう。
学長はもちろん商店主なので、忙しい合間を縫ってお話をうかがいました。

 

まずは「魚沼職人大學」を立ち上げた経緯を教えてください。

資料に掲載されている情報は少し古いのですが…
平成26年当時、小出商店街は市の人口減にともなう来街者の減少、店主の高齢化による空き店舗の増加に加え、大手スーパーの出店や市外へ買い物に出向く人の増加など厳しい状況が続いていました。2016年には「住みやすさランキング」調査でも県内最下位(全国585位)になり、問題が山積みでした。
そんな中、当時魚沼市の商工振興室(現商工課商工係)が推進していた「繁盛店づくり事業」を3店舗で受講することにしたのです。
この事業は、「お客様が入ってみたいと思う店づくり」を目指すもので、実際にディスプレイの先生が店舗に来て教えてくれるものでした。当初、私は「ディスプレイだけでそんなに変わるのかな?」と半信半疑な部分もありました。しかし、いざ受講してみると先生が来た後では、お客様から「雰囲気が変わったね」と言われるなど、確かな変化があったのです。
翌年にはさらに別の3店舗が受講したところ、商店街には以前と明らかに異なる変化が起きていました。
例えば、事業に参加していない店舗でも、季節ごとの飾りつけをする店舗が増えたり、お店同士での企画やコラボレーション商品が生まれたり、などなど…。
お客様の「最近商店街が変わった」という声を多く聞くようになりました。

正直、それまでは「シャッター街だし、高齢化も進んでいるし…」と、人が来ないことをどこか他人のせいにして、何もしていなかった自分に気づきました。
しかし、自分が変われば、現状は変えることができると知り、商店街のみんなで同じような取り組みをすれば、商店街ごと、街ごと変われるのでは?商店街の活性化につながるのでは?と思ったのです。
こうして「繫盛店づくり事業」を受講した商店主を中心として、平成26年12月に「魚沼職人大學」は誕生しました。

打ち合わせ中の店主たち
​次の企画に向けて打ち合わせ中

 

「魚沼職人大學」は、どのような構成になっているのでしょうか

「魚沼職人大學」は、小出商店街の商店主を中心とした「小出キャンパス」と堀之内商店街の商店主を中心とした「ほりのうちキャンパス」の2つのキャンパスで構成されています。
メンバーは結成当時の5名から15名まで増え、平均年齢は45歳です。
私が学長になった理由は、年齢的にちょうど真ん中だったからです(笑)

 

商店街を大学のキャンパスに見立てるという発想はユニークだと思いましたが、なぜ「職人大學」だったのでしょうか。目的や狙いなどを教えてください。

魚沼職人大學には、主に三つの目的があります。

  1. 魚沼市で商いを営む人たちの持っている、プロとしての専門の技術や技能、特技を集約・クローズアップして「魚沼職人大學」の名称でブランド化する。
  2. 新たな魚沼の商店街活動としての定着と向上を図ることによって、魚沼市内で生産・販売される商品や技術等の付加価値を高め、魚沼市の産業振興及びにぎわいのあるまちづくりを推進する。
  3. さまざまな大学活動を通じて、魚沼市の知名度とイメージを高め、新たな魚沼市の地域商業の活性化を図っていく。

職人大學と冠してしまって、ちょっと言い過ぎたかな…と思うこともありますが、「魚沼職人大學を通して繁盛店を増やし、それをつなぐことでまちあるきを促進し、この街にひとをあふれさせる!」をテーマに活動しています。

また、大學の『ねらい』も明確にしました。
まずはターゲット。
来てくださるすべてのお客様を大切にしながらも、一緒に立ち上げた商店主と私自身が(当時)30代の子育て世代だったこともあり、「市内在住の働き盛り、子育て盛りの20~30代の女性とそのお子さま」にターゲットを絞ることで訴求がしやすくなりました。
お子さんに楽しんでもらうことで、親世代の方が商店街を知るきっかけになってもらえればと思いました。

次に、商店街と競合するのはとはどんなところなのかを考えました。
大型店や近隣商店街が競合になるのは当然ですが、最近はネットショップが一番の競合相手になっています。これら競合相手に対して、専門店ならではの知識や技術、困ったときにすぐ連絡できる融通の利きやすさ、お店間の連携が「われわれ商店街の強み」になると考えました。

 

活動のコンセプトを教えてください

活動のコンセプトは「つくる・みせる・うる・つながる」です。

「つくる」:魅力あるお店をつくるために、教授(=商店主)たちは研修勉強会「學ゼミ」を月1回開催し、自店の取組みや悩みごとを共有をしたり、看板商品をつくるための勉強をしています。

「みせる」:商店街の取組みを見える化するために、月2回SNSを通じた販促活動をしています。ここ1~2年はコロナ禍により集客イベントができていないので、現在はYoutubeで、お店に出向いて店内の様子や商品をレポートするPRチャンネル「きねチャン」に力を入れています。ぜひご覧いただけると嬉しいです!

「うる」:商店街としては、やはり売ることが大事です。
加盟店によるコラボ商品や、七夕やバレンタインキャンペーンを展開したりしています。

「つながり」:今、お客様とのつながりをあらためて大切にしたいと思っています。
私が小さい頃、商店街にはたくさんのお店があり、ワクワクしていたことを覚えているので、今の子ども達にも商店街で遊んでもらったり、思い出をつくってもらえると良いなと思っています。
そこから商店街のファンが増えたら嬉しいですね。

ハロウィンの写真
​「トリック オア トリート!」子ども達に楽しんでもらっています。

 

取り組みは、経済産業省「はばたく商店街30選」を受賞しました

近年では商店街以外のお店の加盟も増えました。加盟店以外のお店でも季節のディスプレイやキャンペーンを一緒に展開してくれ、店頭やSNSでの告知が活発になってメディアに取り上げていただき、加盟店の露出が増える結果となりました。2017年には商店や職人技の「見える化」やプラットフォームとしての「魚沼職人大學」のブランド化が評価されて、「はばたく商店街30選」に選んでいただくことができました。

「はばたく商店街30選」受賞の写真

 

今後、どのような展望をお持ちでしょうか

当初3店舗5人で始めた取り組みは、今や多くのお店や団体、地域を巻き込むまでに成長しました。
突き詰めすぎると疲れてやらなくなってしまいますが、教授(=商店主)たちはできることを楽しく、フットワーク軽く、それぞれ色々なことに挑戦し、やりたいことをやっているのでモチベーションは高いです(笑)
今、密かに考えているのは、「魚沼職人大學」でアルバイトを受け入れられないかということです。パン屋は朝、生花店は午前中など、商店によって忙しさのピークは違います。働く方は一店舗でアルバイトをしても短時間だけしか働けませんが、ピークの異なる数店舗を繋げることで安定した収入を得られますし、さまざまなお店で色々な仕事を体験できるようにもなります。

一方、お店側は直接雇用のリスクを減らせると共に戦力を得られるので、お互いwin-winの関係になれるのではないかと思っています。

学生さんに、将来の仕事を考えるきっかけとして、来ていただくのも良いのかなと想像しています。

今後目指すのは、「職人」感の充実、そして他地域への「職人大學」普及です。
「魚沼職人大學」のブランド力を、お客様に安心安全なお買い物を楽しんでいただく事はもちろん、「将来を担う商店主育成の場」としてその地位を築きたいと思っています。

また、「職人大學」をフォーマット化し、魚沼以外にも広く普及していくことで、商店を元気に!商店街を元気に!町を元気に!日本を元気に!していけたら嬉しいですね。

 

ありがとうございました

 

インタビュー中に「お客様が持てる学生手帳を作ってみてはいかがでしょうか」など好き勝手な学生(筆者)の提案を優しく受け止めてくださった杵渕学長。

学長はじめ、多彩な知識と技を持つ教授たちに出会えるという、商店街の新しいカタチと魅力をもたらした「魚沼職人大學」

自宅に居ながら好きなモノを購入できる時代だからこそ、新たな出会いを求めて商店街を歩いてみるのも楽しいかもしれない、そう思わずにはいられないインタビューとなりました。

 

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魚沼職人大學

商店街の活性化を目的として、小出商店街の商店主を中心に立ち上げられた任意団体。
現在は堀之内商店街の商店主とも連携し、「小出キャンパス」と「ほりのうちキャンパス」を展開中。

教授のいるお店の店頭には、「職學」の文字が施された、立派なタペストリーが掲げられている。

■小出商店街公式アプリ:KOI KOI<外部リンク>

■職學公式?YouTube:きねチャン<外部リンク>
小出(「K」OIDE)いいね(「I」I「NE」)チャンネル(「CHAN」NEL)、略して『きね(KINE)チャン(CHAN)』!