本文
夢に立つ山紫水明雪しろき八海山と清き魚野川
年明けし越後三山郷人の心のごとく雪はかがやく
空ひびき土ひびきして雪吹ぶくさびしき国ぞわが生まれぐに
夜もすがら空よリ聞こえ魚野川瀬ごと瀬ごとの水激ち鳴る
荒び男の如く雁木を奔りゆく吹雪ぞ見ゆれ常のまぼろし
秋めきて寒き雨ふる町筋に日中きこゆる大川の音
あさあけの簗にむかひて逸りくる川水青し満ち湛へつつ
雨あとの水量増えし山川の水いきほひて簗をば揺する
橋ひとつ架かれる川の下つ瀬を樫の樹下に立ちて見放けつ
わが生に関リあリし川岸のかの「よろんがし」は今無しといふ
ふるさとに残る墓処を訪ひくれば鳴き響みをり山の郭公
われ暫し沈黙をして故里の父の墓処の山をば思ふ
夜に聴けば矢振間川の川の音の魚野川に注ぐ音きこゆ
雪空に川合流のとどろきの間なく時なくうち上リゐむ
ふるさとの鎮守の森をめぐり鳴く五月水田の夜蛙の聲
八幅さまの境内の雪に華やかに豊年鳩の枝は映えゐむ